先日フルハルターに行ったのに、M800の購入を思いとどまらせた原因の一つ。

大井町からの帰り、次の予定まで時間が余ったので、ちょっと銀座に寄った。最初は伊東屋でC.D.Notebookとか中屋の十角碧溜とか冷かして帰ろう、とか思ってたのに、旦那が言った。
「しばらく忙しくなるから今のうちにやりたいことやっときなよ」
「え、ユーロボックスがどうかした?」

なんかこの日は、全体的に呼ばれてた気がする。わけのわからない物欲パワーが働いていたとしか。

何か目当てのものがあったかと問われれば、否。それよりも私の心は森山スペシャルのM800に傾きまくっていたからね。家に帰って考えるといってもどうせ注文しちゃうんだろうなあと半ばあきらめの気持ちで、ユーロボックスの休業日をチェックした。やってた。

ちょうどお客さんもいなくて、時間を気にしつつ「目の保養w」とか言って旦那を放置してショーケースを見ていたら、なんか緑のものが。

「あの、すいませんこのキャップレス」

私の反応は早かったと思う。
隅っこの方にあったのは、このページを見てからずっと探していた、三島由紀夫が市ヶ谷駐屯地に行く前に下田のお菓子屋さんに残して行ったというPILOTキャップレス(グリーン軸)だった。

時間がないので旦那だけが次の予定先へ向った。その時の旦那の目には幽かな諦念が滲んていたように見えなくもなかった。

ご主人と「これ三島が〜」とか言って、上記のページを見てもらって、「まさにこれですね」と同じモデルであることを確認していただいた。
なんか三島とキャップレスってイメージがないね、とか、三島の生原稿が1枚いくらだった、とかのよもやま話をしている間、私は一度もキャップレスを離しませんでした!

そうこうしているうちに次のお客さんが来店されたので、「じゃあこれください」

当日お持ち帰りになりました。
焦ったのは、この金額ではクレジットカードが使えなかったこと。しかし、奇蹟的に財布にちょうどぴったり現金が入っていたので、お暇した時には財布が空でした。大人なのに……

帰り際、「これからは三島が使ってた、って言って売るね」とか言ってもらったけど、思い返してみるとなんかちょっと自分キモかった。マニアなのは認める。三島の生原稿、手に入れられたら額に入れて朝夕拝みたい。

なんか、グリーンはあまり作ってないようです。人気がないからとか。
ビンテージは見つけたら迷うな、というのは私が身銭を切って得た教訓です。

PILOT vanising point/green
結構長い。サイズ的には現行のキャップレスと変わらないと思うけど、ペン先が出る方の金色部分が復刻版よりは長い。

PILOT vanising point/green
以前マットブラックを試し書きさせてもらった時には結構邪魔だなあと思ったクリップも、なんか慣れてきたのかあまり気にならなかった。三島補正かも。

PILOT vanising point/green
ちょろっと出てるペン先がかわいいですw
字幅はかなり細い。EFくらいだと思われる。とりあえずヴァーディグリース入れてみたけど、結構順調にインクでてる。
ノックはちょっと硬かった。こんなもんだろうか。ペン先を戻す時に結構な力を入れないと戻らないので壊しそうで怖い……

あと、中に入ってたカートリッジホルダーみたいなやつ。未使用のカートリッジが1つ入ってたけど危険すぎて使えないw
空っぽのお財布に実弾を補充して伊東屋に行ったら、もうこの短いタイプのカートリッジは生産しておらず、コンバータで使用するしかないとのこと。現行のコンバータを入れて、きちんとノックできるか確認してもらって購入。
初めて使ったけど、ゴムチューブを押して吸入するタイプだったんだな。サイドレバー吸入式っぽいやつ。とりあえず、洗浄を兼ねて水を入れて練習した。結構入る。

PILOT vanising point/green
もしかしてだけど、結局万年筆って、本体の価値+付加価値なんじゃないかと思った。
物欲・円高に負けて衝動買いした奴よりも、「誕生日に旦那に買ってもらったM800」とか「結婚記念のドルチェビータ」とか「三島由紀夫が使ってたのと同じ万年筆」とか「大橋堂で迷いまくって結局翌日買いに行っちゃった津軽塗」の方が、インクは抜かないしニヤニヤ度が違う気がする……


購入後、再び合流したときに、何も言わずに旦那にユーロの入れ物に入ったキャップレスを見せると「ああ……」みたいな顔してた。そうだね、予定調和だね!

それにしても、探してた万年筆が偶然見つかるというのは嬉しいものです。大事にしよう。



ooimachi.st
人生初、万年筆マニアの聖地であるところのフルハルターへ行って参りました。
大井町駅で迷いつつ、iphoneの地図を睨みつつGPSの青い点を頼りにとことこ歩く。あの角を曲がったらすぐだね何て言ってたら、旦那が「ここに革小物って書いてあるけど……」

教訓。GPSに頼りすぎるな。

GPSの点とは少し離れたところにフルハルターはあった。バス停の目の前、道に面したビルの1Fがガラス張りになっていて中がちょっと見えてる。

万年筆マニアの聖地と申しましたが、今回の目的は万年筆にあらず。フルハルターオリジナルペンケース「Quartet」のPapaveroをオーダーするためなのだった。

とりあえずPapaveroの実物はないと言うことで、フルハルターのオリジナルグリーン(非売品)を見せてもらって、正式にオーダーしてきた。お渡しは半年後くらいになるとのこと。まあ、こう言うのは急いでもしょうがないので地道に待ちますけど……

で、住所とか名前とか書くじゃないですか。それに使うのは当然フルハルターで調整した万年筆、ザ・森山スペシャルじゃないですか。

……森山スペシャルすげえええええええ!!!!1

危うくその場でM800をオーダーしそうになった。だが思いとどまった自分をほめてあげたい。
しかし、やっぱりすげえな、フルハルター。最近は万年筆を育てるのも楽しみの一つ、とか思ってたけど、っていうかそれは今でも変わってないけど、各所で言われた「森山さんの調整した万年筆は1本は持ってた方がいい」というのは間違いでも誇張でもなかった、というのが今更ながらわかった。

あれは特別な1本になる。確実に。

ちなみに、以前話題になった100番の復刻版、キャンセルがあったので、まだ対応可能だそうです。私はあの蛍光グリーンのインク窓が何となく気に入らずに頼みませんでしたが。軸の色は写真で見るより断然きれいな「グリーン」だった。
あと、グリーンオーグリーンもあった。やっぱりきれいだった。

今回購入を思いとどまれたのは、M800の緑縞をすでに持っていたこと。金ペン堂で誕生日プレゼントに買ってもらっていたのだよね。でも100とか400とか600とかを持ってみて、スーベレーンだったらやっぱり800かな、というのも再確認した。

フルハルターは、ふたり座ればいっぱいいっぱいだけど、狭苦しいわけじゃなくてとても居心地のよいお店でした。好きな人はいっぺんいってみたらいいと思う。
一見さんには敷居が何となく高そうなイメージがあったけど、ご主人が気さくにいろいろお話をしてくれるので、コミュ障気味な私でも大丈夫でした! 8時間居続けた人もいたそうですよ……すげえ。でも私も40分くらいはいたと思う。不思議な感じだった。

だが、ブランド含めどのペンを買おうか迷ってる段階だったら、フルハルターにそのまま行くよりも、ほかの万年筆屋である程度絞り込んでいく方がいいと思った。ペリカンほしかったらフルハルター一択だと思う。潔くペリカンしかない。店頭でいろいろ万年筆触ってみて1本に絞る、というやり方ができない。それよりも、ほかのところで触ってみて、「これください!」という勢いのままに事前予約しないとね……

とりあえず、カルテとして自分の筆跡は残してもらった。これでいつでも注文できるぜ!(カルテが残ってれば、次はメールで注文可能だそうです)(でもペンによって角度とかも違うので、M800が欲しかったらM800でカルテを取ってもらった方がいいとのこと)
安い買い物ではないのでゆっくり考えてください、といわれました。なので、ぜひ考えさせていただこう。考えてる間にM800ベースの限定品が何かでるかもしれないし。ブルー、グリーンときて、もしかしたら次はオレンジかルビーがでるかもしれないし! 購入までの逡巡・葛藤もまた楽しみの一つかと……

そして、購入を思いとどまれた理由はもう一つある。
フルハルターを辞したあと、銀座に行っちゃったんだよね……そういえばみんなたちはわかってくれるよね……



Montblanc #25 safety filler
今年の買い納めというか、先日2年弱続いた一見にけりがついたので、頑張った自分へのご褒美、的な?

モンブランのセーフティ。買ってしまいました。
なんか、長い。キャップ閉じたところは146より1cm以上短いのだが、セーフティなのでキャップを取るとすげー長い。その違和感がなんだか素敵。

エボナイトのボディが、キャップで隠れていたところだけ黒々としている。歴史を感じる、80歳(推定)

Montblanc #25 safety filler
カゼイン製のホワイトスター。カゼインと言えばDELTAのヴィアベネットだが。あの天冠よりはちょっとアイボリー気味かなあ。

しかし、とにかく巨大です。
カゼインはちょっとの傷なら自己修復するそうだが、隅っこの方には細かいひびが入っている。お祖父ちゃんだからね。キャップリングもメッキが剥がれてるけどそれもまた善きかな。

Montblanc #25 safety filler
セーフティなので、尻軸をくりくり回すとペン先が出てきます。その時、やっぱり分かってはいたけどペン先全体がインクまみれになる。神経質な人には向いてない。書いてるとだんだんインクが落ちていくのが面白い。

Montblanc #25 safety filler
マイスターシュテック表記なのでドイツ国内向け? 大分薄くなってるけれども、モンブランの刻印健在。

Montblanc #25 safety filler
ペン先を収納した状態。このままペン先を下に向けるとインクがぼたぼた零れます。キャップをはめると、丁度キャップトップの裏側が蓋のようになって、インクの漏れを防ぎます。よく考えてあるなあ。ペン先を出したままではキャップが閉められないようになってます(キャップトップ裏から細い棒が伸びていて、それがペン先に当たるので閉まらない)

持ち運びにはセーフティ(故にセーフティ=安全、と言う名称なのだろうが)
でもお祖父ちゃんだから酷使するのはちょっと怖い、って事で自宅で使ってるけど、今のところインクが漏れたことはない。優秀、と言うか80年前の筆記具が普通に使えるって凄いな。吸入式でもない、複雑な機構があるわけじゃないからこそかも知れないけど。

Montblanc #25 safety filler
ペン先はF。現行モンブランだとEFくらいの細さのような気がする。書き味は「ビンテージ!」と言った感じの腰のある柔らかさ。なんかお店で試し書きしたときと家で書いたときの書き味がものすごく違って「あれー……?」って思ったけど、これはこれで良いかなあと。インクの違い、紙の違いかもしれない。

とにかく、オノトとも50年代146とも違う、独特の書き味だった。死蔵するのも悔しいので、がしがし使おうと思う。インクはヴァーティグリーズをいれました。



Montblanc 146 50's
最近万年筆を買わなくなった。経済的な理由が第一だが、第二に、この万年筆を手に入れてなんだか物欲が満足しちゃった、というのもある(負け惜しみではない)

50年代、テレスコープ式のモンブラン146……なんか行き着くところまできちゃった感じ。
写真は上から順に、現行(プラチナライン)、70年代、50年代。みんな微妙にサイズが違う。50年代が一番小さいが、テレスコープ式ということで、重量は一番重いかもしれない。手触りもみんな違う。しっとり手になじむのは、やっぱりセルロイドの50年代だと思う。

Montblanc 146 50's
ペン先も、左から現行、70年代、50年代。ペン先部分が一番薄く、弾力があるのが50年代だ。ペンポイントは一応OBBということになっているが、すこぶるスタブっぽい線が引ける。70年代は質実剛健な感じ。厚みがあって、でもペンポイントはスタブ調(これはそういう風に調整してもらってるんだけど)さすがに書き比べてみると、現行は一番分厚く、堅い。どっちがいいとかはもう好みの問題以外の何物でもない。

Montblanc 146 50's
ホワイトスターも右端の50年代だけアイボリー。この色がいいんだよなあ、経年変化というか、レトロ感があって……

Montblanc 146 50's
ペン先。イリジウムに厚みがほとんどない。摩滅してるんじゃなくて、元々薄く作られているが故の弾力……これは、みんな血眼になって探すわけだよ。値段が高いのも当たり前だよな……ああ、ちなみにこの万年筆、同軸がすけすけになって吸入機構が見えてたんで安く買えました! やったね!(とてもじゃないが手が出ない額だよ、デッドストックとか……)

しかし、物欲が満たされちゃうのも無理はない。私は元々ビンテージモンブランの書き味が好きで、ビンテージといえば馬鹿の一つ覚えのようにモンブランを集めていたのだが(あとオノトを少し)この146は歴代最強の好みの書き味。
テレスコープのモンブランはすごいらしい、と噂を聞いてはいたものの、高すぎて隣のブドウは酸っぱいに決まってる、と斜に構えていたのだが、ごめんなさいでした。物欲が一気に失せるほど手放せないペンになりました。

じゃあ、三島由紀夫が使ってたっていうテレスコープの149ってどんだけいいの……?

ここに新たな欲望の萌芽が生まれ、でもなんだかそれを手に入れたら自分の万年筆遍歴が終わりそうな予感。たぶんそんなことにはならないし、物欲が治まったというのも錯覚かもしれないけど。

とにかく、50年代の146はすごくいい。自分の手に合うのは149より146かもしれない。そして重さが心地よい。テレスコープ機構が入ってるのでかなりのリアヘビーになるが、私は後ろが重い方が好きだ。ペンに振り回されるような気がするくらいがちょうどいい。これを買ってから、146にキャップをはめて書くのをやめた。

お手頃価格だったとはいえ、プレラを買うようにはいかないのでお財布には大打撃だったが、後悔はしていない。反省はちょっとしている。文章を書くのが楽しい。インクはR&Kのヴァーティグリーズを入れている。



毎年の限定サファリと言えば、2008年のライムグリーンを買って以来スルーできていたのだが、今年はアクアマリンということで、つい手を出してしまった。

そろそろ発売かなあと思って金ペン堂に電話したのは五月も中旬、とりあえず予約して、6月2日、調整済みお渡しとなりました。金ペン堂ってサファリでも調整してくれるんだなあ、とちょっと感動した。

LAMY Safari "AQUAMARINE"
各所で囁かれているとおり、なんか発売前に出回っていた商品写真のくっきりした青色ではない……アクアマリンといえどどちらかと言えば空色、そして生粋の青ではなく、なんとなく緑が微妙に混じっているような印象……まあ、海って大体真っ青じゃなくて緑っぽさがあるなあ、と思う。でも綺麗な色。

LAMY Safari "AQUAMARINE"
ペン先はいつものサファリなので特筆すべき事はないと思われる。限定って言ったって、色が違うだけだからな……ペン先は本当は黒い方が好きなんだけど……

あと、2008年のライムグリーンは天冠部分のネジが黒かったんだが、今回のアクアマリンではボディと同じ色になっている。ここは絶対黒の方が良かった。あえて言うならクリップもペン先も黒の方が良かった……!

LAMY Safari "AQUAMARINE"
我が家にあるサファリの全て。上からレギュラー品のチャコール(クリップが変わる前に駆け込み購入)、ライムグリーン、そしてアクアマリン。旦那がこれを見て「あれ、オレンジって持ってなかったっけ」と呟いていたが、何と間違えているのかは不明。そしてなぜ2009年の限定がオレンジだと知っていたのか……

LAMY Safari "AQUAMARINE"
金ペン堂調整済みなので、書き味に関してはいうことがない。その場でウォーターマンのフロリダブルーを入れてもらって、1文字目から快調だった。丁度店に入ったときにいたお客さんと奥さんたちが「万年筆のインクは一度決めたら云々」という話で盛り上がっていたので、とてもじゃないがインクを色々買えて楽しんでいるとは言い出せない雰囲気……インクの数だけ万年筆を買えというのか……この商売上手……!

軸色が青だからと言ってフロリダブルーというのはいかにも安易な気がするが、他に何も思いつかなかった。今は紫系のインクを使ってみたいなあと漠然と考えているが、まだどれにするか迷ってる段階だし……BUNG-BOXの「愛人」か、色彩雫の山葡萄か……フロー絞り気味の国産細字に入れて美しく映える紫インクって何があるだろう。

金ペン堂にて、前に買った万年筆の調子はどうかと訊ねられたので、満面の笑みで「快調です!」と答える。実際、ここで買った万年筆で問題が生じた物はないと思う。丁度持っていたモンブランを2本見てもらって、にやにやしながら帰宅した。

最近は現行品を買う機会が少なくなって、めっきり金ペン堂には足を向けずにいたが(それ以前に勤務地が変わって神保町が遠くなった。前は昼休みに歩いて行けたのに……)なんかDELTAが増えてた。オーロが2本あったし、ウインドウズシリーズの春と夏があって心が揺れた。ドルチェヴィータシリーズは言うに及ばず、ヴィア・ベネットとか……あとペリカンのエターナルアイスもあった。結構良いなと思った。現行品を買うならやっぱり金ペン堂にしよう、と今回も思った。



三越の万年筆祭りで購入した大橋堂の津軽一号、使い込んで大分こなれてきたので写真に撮ってみた。

OHASIDO fountain pen
相変わらず、持ってると呪い成分が接触感染しそうな禍々しい模様。だがそれがいい。写真では分からないかもしれないが、赤い部分の縁が微妙に透明感を持っていて、眺めていて飽きない。グラデーションと言うよりも、透明水彩絵具を塗り重ねた感じ。

紙はニーモシネ。5mm方眼の中に頑張ればひらがな5文字行ける。

OHASIDO fountain pen
インクはビスコンティのブルーにした。試し書きの時に出てきたのがシェーファーのブルーで、これが煮詰まって濃くなって大変美しかったので、ついうっかり買っちゃったんだけど、新品を開けてみたら意外と赤味が強かったので急遽おうちで眠っていたビスコンティさんにご登場願った。

大橋堂さん曰く、文字を書くときにペン先が滑ってしまっては細部まで制御が効かず、細かい文字は書きにくいので最初からある程度引っかかりがあるように調整している、とのことだった(もちろん希望があれば滑らかにしますけどね、とも仰っていた)

なるほど、中字のペンとは明らかに違う抵抗感があるが、それは引っかかりと言うよりも摩擦? に近い気がする。不愉快ではない抵抗感というか……かりかりする感じが、書いてて楽しい。初めて買った万年筆が舶来中字で、それ以降地味に中字ばかりを選んできた私にしてみれば、これは初めての体験だった。

最近は太めの線で大きめの文字を書いていたが、元々私は細かい文字でびっしりノートを覆い尽くす方だった(後で見返して神経症っぽくて直そうと思った)(映画『セブン』の犯人の日記みたいだった)
なんかそんなことを思い出して楽しくなってしまった。今は無地ノートにちまちま文字を書き連ねて楽しんでいる。

今回のことで細字を大分見直したというか、万年筆=太字の方がにゅるにゅるしてて書き心地がいい、と言う概念を覆す感覚だった。やっぱり買ってよかった。



OHASIDO Fountain Pen
どんっ!!! ……みたいなね。

事の起こりは、私が昨日買った梨地(大橋堂一号)に何のインクを入れようかとぼんやり考えていた日曜日の朝。旦那が「本買いに行きたいな」と呟いた。私はそれを聞き逃さなかった。

すかさず、「丸善の商品券持ってるよ、五千円分」と囁く私。「使っていいの?」と無邪気に喜ぶ旦那。計画通り……とほくそ笑む私。別に丸善の券だから、日本橋丸善じゃなくてもオアゾでもどこでも使えるんだけどそれは家を出るまで黙っていた。

その時の私の心理は、前の日、梨子地塗と最後まで迷った津軽塗が売れてればいいなと思うのが6割、残ってたらいいなと思うのが4割くらいだった。でも今思うと自分に嘘をついていたと思う。残ってたらいいな、が9割だった(結果的に)

そもそも、大橋堂主人が「この津軽塗は実験的にちょっと作ってみただけだから、値段も安め」(意訳)みたいなことを言ったのが悪い。1本しかない、しかも梨地よりはお値段が優しい……なんかこう、色々くすぐられるし、何より極細ニブが着いたこのペンを、私は梨地を調整して貰っている間ずっと試し書きしていて、なんかもう自分の物になったような気すらしていたのだった。いや、錯覚だけど。

実際、塗りとペン先が違うだけの万年筆を何本も買ってどうすんだよ、安いペンでもあるまいに……と思っては見たものの、考えてみたら149も146も2本ずつ持ってた。ソワレとドルチェビータのミディアムも形は一緒……

そんなことを興奮気味に旦那に喋りまくりつつ丸善に辿り着くと、果して、昼間に出掛けた大橋堂のブースには、あの津軽塗が鎮座していたのであった。
お互い、半笑いで試し書き。呆れられているのがひしひしと伝わってくるが、さすがにもう気にしない。アホらしいことしてるのは自覚してたからな。

「じゃあ、お願いします」と言ってしまった自分に反省はしているが、後悔はしていない。
大橋堂主人が言った「まあ、ペンの方が待ってたんだろうね」という言葉は私の罪悪感を綺麗さっぱり拭い去ってくれた。

OHASIDO Fountain Pen
この禍々しい模様がたまらない……ずっと見てると呪いが感染しそう。でもかわいい。

OHASIDO Fountain Pen
ペン先も梨地と同じ14金。ただし、こちらは極細。

OHASIDO Fountain Pen
どうせならイリジウムにピントを合わせれば良かったと思うが、さすがに極細となると、大橋堂名物の玉のようなイリジウムはついていない。細かい字を書くには、あまりペン先が滑りすぎてもいけないというので、あえて少し抵抗感を残すような調整をしているとのことだった。確かに、引っかかるというか、滑らない感じがある。その抵抗感がなんだか快感なのである。ペンに振り回されない感じ。

OHASIDO Fountain Pen
梨子地塗と。ほんとに全く同じ形なんだな……でも、塗りが違う分、持ったときの感覚は結構違う。ぬるりと手に吸い付いてくるような滑らかな梨子地塗と、微妙な凹凸がへんに肌に馴染む津軽塗。

結局、どちらを先に買っても、翌日もう一本を買ってしまったような気がする。まあ滅多に買える物でもなし、そもそも梨地を持って帰宅した時点で「大橋堂一号」なんて名前を付けたこと自体が確信犯的な行動だったと今は思う。

OHASIDO Fountain Pen




ちまたで噂の世界の万年筆展に行ってきた。普段の日本橋丸善の万年筆売り場は地下1階だが、今回は地上1階の催事場に場所を拡大して。そういえば日本橋丸善の一階は初めて行った。

地下一階にはインク工房が来てた。時間が時間だったのでもう並べなかったけど。と言うか何の準備もなく行ったのでびっくりした。
あとは舶来万年筆コーナーと国産万年筆コーナーに別れて激しいバトルが繰り広げられていた。客が結構いた。スティピュラのスプレマ・ペラーゴのアンバーが3割引だったり、デルタのオールドナポリの万年筆とボールペンが4割引だったりした。

地下は、客よりも店員の方が多かった気がする……
ちなみに、丸善日本橋店限定インク「日本橋 紫」はもはや売り切れだそうです。

で、今回の目的は大橋堂の万年筆。仙台の手作り万年筆屋さんで、大きなイベントじゃないと手に入らないみたい。なんか最近気になって仕方なかった。
国産エボナイト漆塗りと言えば中屋だが、こちらもエボナイト軸・漆塗り。つうか、すぐ向いに中屋のブースがあって入りづらかったよ……中屋の万年筆をすでに持っている身としては……

会場には六時頃ついて、大橋堂のブースへ直行。エスカレーターの下で「世界の万年筆展を開催しておりまーす」ってずっと散らしを配り続けていた店員さん、ご苦労様でした。何度もうろうろして正直すまんかった。

まあ、わざわざ会社を早引けして祭りに参加して無傷で帰ってこられるはずがあるだろうか、いや、ない。覚悟はしていましたよ。ぎりぎりまで自制心と戦いはしたが。

OHASHI-DO fountain pen
人間とはオロカな生き物ですニャー、と言った表情。

OHASHI-DO fountain pen
猫が興味を示している。桐箱のにおいがお気に召したようだ。

OHASHI-DO fountain pen
梨子地塗り。きらきらしてて凄く綺麗だったものだから……でも、これと最後まで迷ったのは、実験的に作ってみたという津軽塗。赤と黄色の禍々しい模様が何ともいえず素晴らしかった(参考画像:こんな感じの塗りがもうちょっと細かくなったような……手触りがしっとりしててすごく良かった)

予算さえあれば二本買ってた、と言うくらい悩んだ。最終的には「どっちがいいですかね?」とか聞いちゃった。「好みですからねー」とあっさり言われたがその通りだ。

OHASHI-DO fountain pen
149と比較してみる。かなり短い。ちなみに中屋のシガー・ロングと比べたら、キャップ閉じた状態で5cm違った。

OHASHI-DO fountain pen
しかし、キャップを開けると長いのです。このギャップにちょっとびっくりした。キャップをさして握った状態がとても手のひらにしっくり来た。

OHASHI-DO fountain pen
ペン先。今回は細字を選んだ。極細と最後まで悩んだけれども、結局安全地帯に逃げ込んでしまった感がないでもないが、うちにはいないタイプの子を迎えられて満足です。

OHASHI-DO fountain pen
OHASIDOの刻印があるペン先。セーラー製。側面に「S-F」とあるので軟調細字ってこと?
書き味は弾力があって、普通のガチニブとは違う雰囲気。細字に対するイメージが一気に変わった。そして何より、びっくりするほど書きやすいのだった。なにこれ、みたいな。「大橋堂!」みたいな。

OHASHI-DO fountain pen
美しい梨子地塗はとても写真で再現することは出来ませんでした。黒地に金とオレンジが散りばめられている……津軽塗はど派手で目立ってインパクトが大きかったが、こっちの梨地は地味差の中に趣があるというか……まあ充分派手だが……

ちなみに、ボディはエボナイト製なのでびっくりするほど軽い。軸に金属リンクをはめて主さとバランスを調節できるようにしたモデルも試してみたけど(緑軸諭吉12人)うーん、この軽さがいいのかも、と思った(予算完全オーバーの負け惜しみではなく)

この、「小さいのに長い」「細字で滑らかな書き味」という色々私の予想を裏切ってくれるところが購入の決め手というか一目惚れというか……しかも無料メンテナンスもして頂けるというので安心です(年数回のチャンスだが)
あと各所で囁かれている「ネジの回転数が多い」だが、確かに手元のペンは5回まわさないと閉まらない。まあ別にどうでもいいけど。

結局、1時間くらいお邪魔していた。軸とペン先が決まった後、ペン芯とかペンポイントとかの対面調整をしてもらえたのだが、人見知りの私がかなり楽しくお話をさせて頂いて、なんだか久しぶりに「物を買うプロセス」自体を楽しませて貰ったような気がした。

まだインクは入れていない。眺めてにやにやしているだけである。



結局の所、私にはモンブランの149中字が1本有ればいいのではないかと思い始めた去年の暮れ、出来たら五〇年代の149が欲しいなあ(三島由紀夫とお揃いの)でも幾らくらいするのかなあなんてぼんやりと思いながら悪魔の館ことユーロボックスへ足を踏み入れたのが運の尽き。

50年代149が店頭にあるではないか。あったのだが、値段は希望通りとは行かず諭吉17人分。さすがにこれは手が出ない、諦めて帰ろう、もしくは店頭にあるのが太字だから中字を探してもらう依頼をしてお暇しよう、と踵を返しかけたその時に目に入ったのが70年代146。そういえば146はプラチナラインしか持ってなかったなあ、やっぱりモンブランの醍醐味は金色だよなあ、とか逡巡すること数分。

ちなみに私は149の次くらいに146が好きだ。キャップをはめて丁度良い筆記感、地味派手な佇まい……使いやすさだけを追求したら、このサイズ、この形が自分の手に合ってるような気がしている。まあドルチェビータM800も好きなんだけどな。

Mont blanc 146
そしてほぼ1ヶ月後、こうして私の手元にやってきた金色の146。現行146と比べると微妙に短く、微妙に軽い。特徴的なのは、尻軸の形がスマート、というか細くてちょっと角張ってることかなあ。

Mont blanc 146
ホワイトスターの形もちょっと違う。向かって左が古い方だが、ちょっと角張っているのがおわかり頂けるだろうか。まあ、どっちも可愛いのだけれども。

Mont blanc 146
ペン先のメッキも違う。古い方は全金です。
ちなみにこのペン先、ユーロボックスで見たときは赤茶けてて凄くかっこよかったのだが(ようは経年変化でくもってるだけ)磨いてくれたので普通の金色になっている……あのままでも良かったのにな……先に言っとけば良かったかと後悔した。ほっといたらあんな色に戻るのかね。

Mont blanc 146
ペン先は多分Bくらい。ちょっと細めに調整してもらった。本当は中字が良かったんだけど、現行の法も中字だし同じじゃ芸がないだろうし、どうせ別の時幅もいずれ欲しくなる、と思って……(既に複数本購入することが仮定されている)
インクウインドウは青。作家シリーズのドストエフスキーと同じ色になります。ドストエフスキーはいいペンだと思う。地味派手で。

Mont blanc 146
ペン芯の形状も現行とは違う。手前が現行、奥が古い方。一本縦線が入っていて、フィンが抜けていない。
この頃ってエボ芯だったっけな? さっきインクを洗った乾かしてるんだが、ペン芯が黒と言うよりは灰色。なんか見たこと無い色してるな……

とりあえず、じっと観察してみると、このペンには以下の特徴があるようだ。

・キャップ上部にシリアルナンバーの刻印無し
・キャップリング(3連)には「146」等の型番刻印は無し(フォントは現行よりちょっと細め)
・クリップはなで肩っぽい
・ペン先の刻印は「14K」で全金
・インクウインドウはクリアブルー
・尻軸のリングはフラット

まあなんか、70年代だか80年代だかよく分かんないけど、ユーロボックスが70年代というなら70年代なんだろう、多分。修理屋なんかで部品が変わってる可能性もあるし、そもそも私も部品取っ替えてもらったし。部品が変更されてるということは、前のオーナーが修理しながら大事に使ってたのかも知れないし、そう考えると楽しいけれども、ヴィンテージを買うときいつも思うのは「これが誰かの遺品とかだったらどうしよう」ってことだな。
それはそれで別にいいし、今度は私がそれを引き継いで大事に使おうとは思ってるけど……

私も自分の形見分けは万年筆にしようと思ってるし、そう言うことをこみにしても、ヴィンテージ万年筆は面白いです。



先日、別冊太陽の三島由紀夫特集号を読んだのだが、結構面白かった。万年筆の話題はちらりとも出ていないけれども、直筆原稿の写真が結構あったので書き記しておくことにする。

満寿屋の原稿用紙といえば、三島由紀夫や川端康成が愛用してたとして有名だが(公式サイトからのアナウンス)別冊太陽に掲載されていた直筆原稿は、ほぼオキナの原稿用紙だった(多分だけど、新潮社が渡した原稿用紙がオキナだったんじゃないかな)

その中でも特に目を引いたのが、遺作となった『天人五衰』の最終ページ。細字の万年筆(インクは多分ブルーブラック)を使って描かれた原稿は、なんだかほかの直筆原稿とは違う。
三島由紀夫の筆跡は、かっちりしていて読みやすい(書き損じの原稿は捨ててしまって編集者には見せなかったというから)のだが、なんだかこの最後のページの文字は、崩れているのではないけれども勢いがついていて、自分でも制御できないような圧倒的なエネルギーを感じる、ような気がする。これを書き上げた後、市ヶ谷駐屯地に(まあ数日のブランクはあったといえ)……

書斎の写真には、やっぱりモンブランの149がででん、と控えている。鉛筆と、おそらくはパーカーであろう金張りの万年筆もあるけど、なんでかあんまり話題に上らない。パーカー51らしいというもっぱらの噂だが、パーカー持ってないからわかんない。

あと、三島由紀夫と万年筆の話題で、こんなページを発見した。
『三島由紀夫と万年筆』

下田にある、三島ゆかりの「日新堂」というお菓子屋さんに、三島が駐屯地に赴く前において行ったという万年筆があるという。その写真もあって、ちょっと感動した。
万年筆のモデルは、PILOTのキャップレス(緑軸)。今でいうところのゴールドグリーンかな。いろんな色があるみたい
古い方は、もつところの金が少し長いのか。キャップレス、全然興味なかったけど、60年代物だったらちょっと欲しいなと思ってしまった。すごいぞ三島パワー(物欲)。

三島由紀夫は細字を好んでいたようだ。というか、その時代、あんまり太字なんかははやらなかったのかもしれない。三島直筆原稿を見て、私の太字熱が一気に冷めたことは、ここに書き記しておくことにしようと思う。

万年筆以外で結構面白かったのは、三島が猫好きの人と交わした書簡。「愛猫チル花押」と書いて、ブルーブラックインクの肉球スタンプが押してある。猫はさぞかし迷惑だっただろうが、猫の肉球にインクを塗りたくって、葉書にぺたりと押して、それを見てにやにやしている三島を想像すると微笑ましい。直筆猫のイラストとか、妙にうまいし……似てるし……

最近の作家(おそらくは安部公房以降)が不幸(?)だと思うのは、ワープロ・パソコンの普及によって直筆原稿がなくなってしまったことだと思う。もし、死後に作家の博物館とか記念館とかが建立されたとして、『直筆原稿』『愛用の筆記具』ではなくて、『自分で印刷した原稿』『愛用のノートパソコン』が展示されているのではあまりにも寒々しい(いや、しかし安部公房が愛用していたワープロ・文豪があったらそれはそれで見てみたいが……)



PAGE TOP